マンフレッド (岩波文庫)

マンフレッド (岩波文庫) の詳細

昔、詩人バイロンに熱狂した時期があった。その時でさえも、代表作である「マンフレッド」は、バイロン詩集の中で、その一部でしか読めず、全貌は読めなかった。いま、復刊が何十年ぶりかになされ、やっと読むことが出来た。資質において、詩人として考えうる限り最高の才能を持ちながらも、罪の意識に苦しみ抜き、その暗さと苦悩が、詩の中に著しく現れてきている。初期の楽天的なヒロイズムが失われ、死が様々に現れている。バイロンは、普通の散文を書いても詩になってしまうような天才的な詩人であるが、内容には深みがあるとはいえ、このマンフレッドの中で苦しむバイロンの姿は、共感はするものの、好きにはなれなかった。でも、バイロンの詩なら何でも読みたい私には、最高の詩作品であり、何度読んでも味のあるバイロンの文章の美しさは健在。さらには、バイロンの訳は私の最も好きな小川さんだったので、突然のプレゼントを受け取ったように、うれしかった。バイロン好きの人には、この復刊の機会にぜひぜひ読んでいただきたく思います。