盞結 (新釈古事記伝)

盞結 (新釈古事記伝) の詳細

【内容（ネタバレ禁止！）】今回は、夫婦のあるべき姿について。が、題材は行く先々で結婚してしまうモテモテの大国主命…非常に難易度の高い解釈になるが、やはり名著。見事な解説が加えられている。【ささった言葉】・どんな人からでも「髪の毛の虱を取ってください」と頼まれるようになれば、人間もたいしたものだと思うのであります。・この「生太刀、生弓矢」の教えは、意味の深いものであって、あらゆるものを生かし、あらゆるものに適当な位置を与え、あらゆるものに意義あらしめよというのが大和民族の教えであります。・このような、須勢理比賣の心の荒びに誘われて、大国主命の心もだんだんと荒んでいきました。須勢理比賣は勝ちさびの心を起こされて、高慢な気持ちになったのであります。・つまり、“誓い”を立てたその時が出発点となって、夫婦の道の追求がはじまるのであります。「夫として間違いない道を歩いているか」あるいは「妻として間違いない道を歩いているか」ということを常に反省していかなければならない。要するに、おたがいに第一義の「つまどい」をしなければならないのであります。そして「つまどい」をしては、“誓い”の心を新たにして、揺るぎない誠意を確かめ合い、喜び合って、いよいよ心を動かさぬように励まし合うのが「うきゆい」の根本義であって、言い替えれば、夫婦の道には「うきゆい」ということはなくてはならぬ事柄であります。・男性から女性の存在を頼りにして、女性から男性の存在を頼りにして、そこに、人生というもの、世の中というもの、人類の文化というものが作られ、支えられ、栄えていくのであります。これが、永遠の男性と女性との「よばい（呼び合い）」の現象であり「身合い」の現象であり、男性と女性との頼り合いであります。・この「よばい」と「身合い」の精髄は結婚であります。・「結婚生活は、真心を持って、素直に営むべきものである」【教訓】我々が「当たり前」と呼んでいつのまにか身につけている道徳観がここにある。一読して教訓が見当たらない謎の童話だった古事記の物語に、これほどの「大人な」美学が据えられていたと！真の学問とは神話をしっかりと読みこむことなのかもしれない。